夕食を食べ、リビングでのんびりテレビ鑑賞中。
「そろそろお風呂洗ってきてね」なんて会話をしつつ子供達とくつろいでいると。
長男が
「なんかお腹が痛いかも」
と一言。
夕食もいつも通りしっかり食べていたし、熱もなさそうな上、彼はよくお腹を下すので、「トイレ行ってきたら?」とだけ言って、私は洗濯物を片付けにリビングを後にしました。
ところが、しばらくすると。
「ママ、大変!」
と長女の呼ぶ声。
慌ててリビングに戻ると、ソファに寝転び腹痛に呻く長男。
「お腹、痛い……」
さっきとは打って変わってぐったりした様子。
「ど、どーしたの!」
「なんか、だんだん痛くなってきた……」
「お腹のどこが痛い?」と聞くと、おへそあたりを押さえる長男。上着をまくると、おへその若干右側を抑えています。
(お腹の右側……もしかして盲腸??)
「ちょっとごめんね」
そう言って、彼のおへその右を軽く押してみます。
「痛い?」
「うん」
そして、押していた手を離します。
「押した時と離した時、どっちが痛い?」
と聞くと「戻した時」と即答する長男。(あ、やっぱり盲腸かも)
私が子供の時、よくお腹が痛くなる子供だったので。
病院で先生に聞いた、盲腸の特徴を思い出してみました。
・盲腸は右下腹部にあるが、初期は痛みの場所はおへそ付近など様々、場所も変動する
・患部を触った時よりも戻した時の方が痛い
・右足に衝撃を加えると痛い
確か、こんな感じ。
試しに寝ている長男の右足を持ち上げ、30センチほどの高さから落としてみると
「響いてすごく痛い」とのこと。
やっぱり、完全に当てはまってる!
自室で仕事をしていた主人を呼び、すぐに病院に連れて行くことに。
今は平日夜9時前なので、いつもの病院ではなく、夜間診療所に行かなくてはなりません。
そして、夜間診療所ではそんなに検査ができないと思われるので、きっとそこから病院へ移動。
何時に帰ってこられるかわかりません。
そのため、迷いましたが次の日も学校があることを考え、長女は留守番。
時間が来たら自分でお風呂に入って、私たちの帰りを待たずに寝るように伝えました。
車に乗っている間にも、どんどん痛みは増すようで。診療所に着いた頃には、長男は歩くのもやっとという感じ。
駐車場を出てからは、主人が背負って診察室へ。こんなに長男が痛がる様子を見るのは初めて。
十中八九盲腸だと思うけど……もっと大きな病気だったらどうしよう!!
長男の様子と比例して、どんどん心配になってきてしまいました。
幸い、夜間診療所で待っていた患者さんは、一人だけ。待合ベンチに座り、長男の背中を撫でながら待ちます。
痛がる彼には、「パパとママがついてるから大丈夫だよ」と言ってあげることしかできませんでした。
予想通りあまり待たず、9時半ごろには診察室へ。
でも、夜間診療所の先生は、家で私がやったような患部を押したり足を上げたりする検査をするのみ。
診療所では、やはり精密検査などはできないようです。
「盲腸っぽいですねぇ」
とのんきに話す先生。
(いや、それはもうわかってるから!)
と言いたくなるのをグッと堪える私。
そして、先生は
「小児救急がいる〇〇病院へ紹介状書きますね」
と何やら確認の電話をその場でかけ始めました。
「今日〇〇先生います? こういう症状の子供がいて、そちらに向かってもらいますんで、紹介状書きますね。今日は空いてます? ところで、〇〇先生って、どういう漢字でしたっけ」
緊張感のない電話にイライラ。
「紹介状できたら呼びますので、待合室へ」
看護師さんに促され、待合室に戻る3人。
長男は、痛みに加え寒気が出てきたようで震え出したため、持ってきていた膝掛けを肩にかけながら、やっぱり背中をさする位しかできない私と主人。
そして紹介状ができたのが10時ごろ。
「必要なら救急車で行きますか?」と先生。
え、必要かどうかは親が判断するの??
戸惑う私と主人。
これから向かう病院は、今いるところから10分くらいのところにあるので、自分たち行くことにしました。
家の近所では一番大きい〇〇病院。
守衛さんに夜間診療の入り口に案内してもらいます。
さすが、大病院。
10人近くの方がすでに待合室にいました。
もちろん、付き添いの方もいるでしょうから、全員が患者さんとは限りませんが。
一体、長男はいつ診てもらえるんだろう、と不安がよぎります。
受付で紹介状を渡したら、すぐに案内してもらえるのかなと淡い期待を持ちましたが。
初めて来た病院であったため、受付でもらった紙に診療所で書いたのとほぼ同じ、症状の説明をまた一から書いて提出します。
(紹介状にその辺り含めておいてくれてもいいのになぁ……)
しかも、名前と住所と電話番号をいちいち書くのがとても面倒。
少し待つと、看護師さんに声をかけられ、別室へ促されました。(あ、もう診てもらえるのかな)と思ったのですが、看護師さんに症状(受付でもらった紙に書いた内容とまるで同じもの)を説明すると。
「では、このファイルを持って診察待合へ行ってください」
とだけ。
これ、いちいち私が説明する意味ある?
書いた紙を読んでくれればよくない??
あれ、何のために書いたのよ???
しかも、待合ってことは、また待つのかな。
歩くのが辛い状態の長男は、用意していただいた車椅子の上でぐったり。この姿を見るだけで涙が出そうになります。
私はファイルと荷物を持って、主人は車椅子を押しながら別棟の診察待合へ。
薄暗く長い廊下を、痛がる長男声をかけながら歩きます。
悪い予想は当たってしまい、ここでも人がたくさん。
この時点で既に11時過ぎ。
一体いつ先生に診てもらえるんだろう?
いつになったら、長男は楽になるんだろう??
やっとの思いで病院に着いたのに、ここからさらに時間がかかるとは!
幸いにも、小児科は空いていたようで、割とスムーズに診察室へ。
やはりここでも先生に一から説明。
夜間診療所でも、さっきの看護師さんにもしたのに、早く診てよー、と思いつつ、同じ説明をする私。
話を聞いて、お腹を押さえたり足を上げたりするテストをして、やっぱり先生は
「盲腸の可能性がありますね」
とのこと。
(もう、それはだいぶ前からそんな気がしてます!!)
と、心の中で叫ぶ私。
そして、
「これから血液検査をします。それで炎症が確認できたら、CTを撮ります」
との説明を受け、採血後、再び診察待合へ。
30分以上待ち、血液検査の結果、やはり炎症を起こしているということで、今度はCTのため、受付の近くにある検査室へ、また長い廊下を車椅子を押して歩きます。
今度は点滴も受けていたので、点滴用のカート(?)も追加。
「俺、点滴初めて」
という長男。
「せっかくだからさ、写真撮っておいてよ」
少し痛みが減ったのか、軽口を叩く彼に、少し安心する私。
ファイルを検査室へ提出し、待つのですが。
CTを受けるときに用いる造影剤に副作用の可能性があるということで、同意書を書くことに。
「重大な後遺症が残る可能性、場合によっては命を失う可能性がある」と書かれた紙を渡されて、急に怖くなりました。
副作用が起こる可能性がとても低いことはわかるのですが、改めて文章にされると急に現実感が増します。
でも、サインしないわけにもいかないので、ドキドキしつつ名前を書き、検査を待ちます。
待って、待って、やっと検査を受けられたのが12時半ごろ。
そして検査結果を持って、先生に診断をしてもらえたのは1時過ぎでした。
結果は予想通りの盲腸!
ではなく。
大腸の回盲部というところが炎症を起こしているということでした。
「ここの色合いが他と違うのってわかりますか?」
先生に指をさされた大腸の先あたりが、確かに少し白くもやっとしているような。
これを即時に見抜き、判断するお医者さんってすごいなと改めて感じました。
きちんと検査と診察してくれて、しっかり診断してもらってよかった。
「それと、ちょっとここを見て欲しいんですけど」
と先生。
示されたところを見ると、何やら白くて細い棒状のものが何本も写っています。
「これ、魚の骨だと思うんですけど、最近食べました?」
「えっと……昨日はアジのたたき、今日はカレイの煮付けを食べました」
そう答えつつ、焦る私。
「あの、アジは小骨を取らずに叩いてしまってるので、それでしょうか??」
もしかして、この骨が腸に刺さったりして痛みの原因になっているのかと焦る私。
3枚に降ろした後の小骨はざっとしか取っていなかった……!!
私の料理方法が大雑把なせいで、長男がこんなに苦しんだの?!
ど、どうしよう!!
「うーん、昨日のアジの小骨程度なら、そんなに残らないと思うんですが」
「でも、さすがにカレイの骨は飲み込まないと思いますし」
と確認するように長男を見ると。
……こやつ、目が泳いでおる!!
「まさか、カレイの骨飲んじゃったの???」
と聞くと。
大きい骨は外して食べていたが、ヒレの付近の細かい骨がめんどくさくて、そのまま食べてしまったとのこと。
カレイの骨を食べるなんて、そんなこと、ある??
「カレイの骨か〜。これ、はっきり写ってるね」
と先生も苦笑い。
「もしかして、回盲部炎の原因ってこれですか?」
「いいえ、骨は原因にはなりませんが、炎症部位を通るときにちょっと痛いかもしれないですね」
とのこと。
「魚の骨を取るのは面倒だけど、だからって食べちゃダメだぞー」
と先生に言われ、ニヤニヤしながら頷いている長男を見て、顔から火が出そうに。
確かに、「骨取って食べてね〜」と声をかけるぐらいで、どこまできちんと取っているかは確認してなかったな〜。
というか、普通カレイの骨なんて食べるか~?!
そして、病名もわかり。
手術の必要はないとが、絶食の必要があるとのことで、長男は数日入院することに。
上の方の階にあった小児病棟へ上がり、入院の手続き。
看護師さんに説明を受け、書類を記入します。
その間に、長男は空いていたベッドで就寝。
手続きが全部終わり、長男の様子を見に行った時は、もう2時半になっていました。
長男は痛み止めのおかげかぐっすり。
「おやすみ」
と小さく声をかけ、病室を後にしました。
薄暗い病室を、主人と二人歩いて玄関へ。
ところが、入ってきたときは空いていた救急外来のドアが閉められていたのです。
これ、どこから出ればいいの??
初めての大きな病院。
消灯も過ぎており、人影なし。
電気もほぼ消えており、不気味な雰囲気。
もしかして、こんな中、迷子になった??
しかも、ここは病院。
ショッピングモールのように案内掲示板も見当たらなければパンフレットもありません。
ネットで調べても、各階に何科があるとの記載はありますが、フロアガイドのようなものは掲載されておらず。
「これ、どうやって出るの?」
「朝まで出られないとか、ないよね……」
聞く人すら見当たらないので、しばらく二人でウロウロしていると、たまたま見回りしていた警備員さんに遭遇。
別棟にある、職員用の非常出口まで案内していただきました。
まさか、最後にこんなトラップがあったとは!!
看護師さんに、出口の場所を確認しとけばよかった〜。
そして、家に帰るとなんと3時半。
長女がぐっすり寝ているのを確認すると、二人とも倒れこむように就寝。
とてもとても、長い1日となりました。
明日、お見舞いに行ったら、元気な長男に会えますように……。