お医者さんから処方された薬って、症状がなくなれば飲むのをやめてもいいの?余った薬って後々飲んでも大丈夫?家族で使いまわすのは?そんな疑問について、なのはな耳鼻咽喉科院長の境修平先生から、耳鼻科医の観点でお答えいただきました。

基本的には「飲みきる」のが原則
通常の保険診療の場合、「念のためのお薬」などを処方することは原則できません。よって処方された薬は、その病気に対して必要な量を処方されていると考えて下さい。
そのため、「飲みきる必要があるの?」という質問には「飲みきってください」と医療者側からは答えます。
ですがこれは原理原則であって、例えば風邪症状で受診して一般的な風邪薬をもらって症状が落ち着いたら、飲むのを辞めるというのは問題ないと思います。
わかりやすくいうと症状を緩和するもの、例えば喉が痛いから処方された痛み止めなどは問題ないと考えます。
処方されたもので止めてはいけない薬
逆に辞めては駄目なのがその病気の治療をする薬です。最たる例が抗生剤です。当院に受診している患者さんでも「症状がよくなったから飲むのをやめた」という人は多いです。医療者側からすると一番やってほしくないことです。
抗生剤は系統にもよりますがペニシリン系やセフェム系と呼ばれる抗生剤は飲む期間がそのまま治療効果と連動しています。専門的にはtime above MIC(=最小発育阻止濃度)が重要であり、細菌を死滅させるのに必要な薬剤の血中濃度を保っている時間が長いと効果が出ます。
よって7日分処方されたのにも関わらず、よくなったからといって4日でやめてしまうと、治療効果は半分程度になってしまいます。細菌も抗生剤に対しては耐性をもつようになるので、抗生剤が効きづらい状態になってしまい、治療に難渋することがあります。
医師は適当に抗生剤の種類や投与期間を決めているわけではありません。症状や所見、重症度から抗生剤の使い分けを細かくやっています。特に耳鼻咽喉科領域においては急性中耳炎でそれが顕著です。
余った薬でも、症状緩和をするものは飲んでもらってOK
痛かったから余っていた痛み止めを飲むとか、鼻水がでたから花粉症の時にもらった抗ヒスタミン薬を飲むという行為は悪いことではありません。例えばこどもが夜中急に耳を痛がって泣いていたので痛み止めを飲ませて、翌日耳鼻科へというのは問題ありません。
耳鼻科医としてむしろやってほしくないのは、耳を痛がって泣いていたので夜間救急外来にいくことです。治療を一刻も早く!というお気持ちはわかりますが、よほどひどく痛みを訴えたり、異常が見られたりするのでなければ、痛み止めを飲ませて寝かせるのがベストです。翌日早めに耳鼻科を受診しましょう。
話は若干それましたが、症状を一時的に抑えるものであれば一時的に飲むのはかまわないと思います。逆にやって欲しくないのが「余っていた抗生剤をのんだ」というもの。前述のごとく抗生剤の種類や投与量・期間は医師のみが判断できます。「余っていた抗生剤を飲んだが治らないのできました」という人もいますが、自分で病気を治りづらくしていることにも繋がります。自己判断での抗生剤内服は絶対にやめましょう。
万が一抗生剤が余った場合はすみやかに処分する
薬には必ず使用期限があります。未開封で使用期限内であれば飲むことは可能ですが、高温多湿の環境で保管していたなどとなると成分が変性している可能性があります。適切な環境で保存しておいた場合は飲んでも問題ないとご理解下さい。痛み止めなどはいざというときに使えるので、常備しておいてもよいと考えています。処分する必要はありませんが、お子さんの場合体重が増えてくると必要な薬の量が変わってきますので、効果が落ちることはあるかもしれません。
処分した方がよいのは繰り返しになりますが抗生剤です。本来飲みきるべき薬なのであまることは無いはずなのですが、あったら「とりあえず飲ませる」という風になりかねないので万が一飲み残しの場合は処分をお勧めします。
意外な落とし穴となる、家族間での薬の譲渡
本論とはずれるかもしれませんが、「薬が足りなかったので兄弟の薬を飲ませた」と言ってくる親御さんがいます。医療機関で処方された薬は原則本人用なので、家族であっても使い回しが厳禁(正確には法律違反/薬機法や医師法、向精神薬取締法に抵触するため)です。兄弟が多い場合は薬の管理がかなり大変になることもあると思いますが、適切な治療を行うためにも個々人で管理ができるよう工夫されると良いと思います。
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