子どもがちっともお風呂に入ってくれない。どうしたら入ってくれるようになるんだろう?どのくらい入らなくても問題ないの?そんな悩みについて、不登校/こどもと大人の漢方・心療内科出雲いいじまクリニック院長の飯島慶郎先生からお話をお伺いしました。

子どもがお風呂に入らないとき、どうすればいい?
「何度言ってもお風呂に入ってくれない」「お風呂だよ、と声をかけるだけで不機嫌になる」。お子さんの入浴をめぐって、毎晩のように頭を悩ませている保護者の方は少なくないと思います。
私は島根県出雲市で不登校を中心とした児童精神科の診療を行っていますが、「うちの子、お風呂に入らなくなりました」という相談をよく受けます。ただ、最初にお伝えしておきたいのは、子どもがお風呂を嫌がること自体は、発達の過程ではごく自然なことだということです。
この記事では、まずお風呂を嫌がる「よくある理由」と家庭でできる工夫をお話しし、そのうえで「ここからは少し注意が必要」「専門家に相談したほうがいい」というラインについてお伝えします。
お風呂を嫌がる「よくある理由」
まず安心していただきたいのは、多くの場合、子どもがお風呂を嫌がるのには発達段階に応じた自然な理由があるということです。
「自分で決めたい」時期
2〜3歳のいわゆるイヤイヤ期は、何でも「イヤ!」と言いたいお年頃です。お風呂に限らず、着替えも食事も歯磨きも嫌がる。これは自律性が芽生えている証拠であり、成長の一過程です。
今やっていることをやめたくない
お風呂よりもブロック遊びやお絵描き、テレビのほうが楽しい。大人だってドラマの途中で「お風呂入って」と言われたら嫌ですよね。子どもにとっては、楽しい活動を中断することのハードルが大人の何倍も高いのです。
そもそもお風呂は子どもにとって大変。大人には何気ない日常動作ですが、お風呂は「服を脱ぐ→体を洗う→髪を洗う→すすぐ→湯船に浸かる→体を拭く→着替える」という多くのステップを順番にこなす必要がある、かなり複雑な作業です。一般的に、自分で体を洗い始めるのは4〜5歳頃、洗髪まで一人でできるようになるのは6〜7歳頃とされています。小学校低学年くらいまでは、お風呂の自立そのものが発達途上にあるわけです。
・感覚的に苦手な要素がある。
・シャワーの水圧が痛い。
・お湯の温度が気持ち悪い。
・シャンプーが目に入るのが怖い。
・浴室の音が響いてうるさい。
こうした感覚的な苦手さは、発達特性の有無にかかわらず、多くの子どもに見られます。大人が気にならない刺激でも、子どもにとっては大きなストレスになることがあります。
「面倒くさい」
小学校高学年から中学生になると、理由はシンプルに「面倒くさい」になります。ゲームや動画に夢中になっている時間帯に声をかけると、「あとで」がエンドレスになりがちです。思春期に入ると、親に言われること自体への反発もあるでしょう。ここまでは、年齢相応の自然な反応です。
ただし、「面倒くさい」にも程度があります。何度声をかけても動けない、本人も「入らなきゃ」と思っているのに体が動かない――そうなると、単なる怠けとは違う可能性が出てきます。たとえば発達障害のある子どもは、目の前の活動から切り替えられない、手順の多い作業の段取りがうまく組めない、といった実行機能の問題を抱えていることがあります。また、うつ病の初期には意欲の低下や疲労感が前面に出るため、本人には「面倒くさい」としか自覚できないことがあります。「面倒くさがり」の裏に、脳の機能的な問題が隠れていることもあるのです。
こうした理由の多くは、日常のちょっとした工夫で状況が変わります。一方で、後半でお伝えするように、工夫だけでは対応しきれないサインが潜んでいることもありますので、そこも頭の片隅に置いていただければと思います。
家庭でできる工夫
○予告してあげる
「お風呂入りなさい」という突然の命令ではなく、「あと10分したらお風呂の時間だよ」と予告するだけで、切り替えがぐっとスムーズになります。タイマーを使って本人に管理を任せるのもよいでしょう。
○感覚面の配慮をする
シャワーの水圧が苦手ならやわらかい水流に切り替える。シャンプーが怖いならゴーグルやシャンプーハットを使う。熱いお湯が苦手なら温めに設定してあげる。こうした小さな調整で「嫌」のハードルが下がることがあります。
○「完璧」を求めない
湯船に浸からなくてもシャワーだけでOK。シャワーも無理なら体を拭くだけでもOK。「足だけお湯につけてみる?」「蒸しタオルで顔を拭くだけでもいいよ」でも十分です。100か0かではなく、できることから始めるという姿勢が大切です。
○楽しい要素を加える
入浴剤の色や香りを選ばせる、お風呂用のおもちゃを用意する、「今日はどっちが先に洗い終わるかな?」と競争にする。小さな子どもほど、「楽しい」が最大の動機づけになります。
○ルーティンに組み込む
「ごはんの前にお風呂」「おやつの後にお風呂」など、毎日同じ流れを作ると、子どもは自然とその時間になるとお風呂に向かうようになります。大規模研究でも、入浴を含む一貫した就寝前ルーティンが子どもの睡眠の質や情緒の安定に良い影響を与えることが確認されています1)2)。
○お風呂の「良い効果」を伝えてみる
就寝の1〜2時間前にお湯に浸かると、入眠が早まり睡眠の質も向上することがメタ分析で報告されています(研究では40〜42℃程度で効果が確認されていますが、温度への過敏さがあるお子さんはぬるめで構いません)3)。また浸漬入浴がシャワーに比べて不安感やストレスを軽減するというRCT(ランダム化比較試験)もあります4)。「ぐっすり眠れるよ」「疲れがとれるよ」という伝え方は、とくに睡眠リズムが乱れがちなお子さんに響くことがあります。
なお、これらの工夫はお子さんだけでなく、きょうだいや保護者自身などお風呂が苦手な家族にもそのまま応用できます。家庭内で「お風呂が苦手=だらしない」という空気を作らず、それぞれのペースを認めることが、結果的にお子さんの安心感にもつながります。
![ママ広場 [mamahiroba]](https://mamahiroba.com/wp-content/themes/mamahiroba-2024/images/common/logo.webp)
