子どもの近視が年々深刻化しているなか、近視治療についても日々新しい技術が模索・開発されています。今回は、「近視治療2.0時代の到来」をテーマに、医療法人社団久視会いわみ眼科理事長岩見久司先生から最新の近視治療についてお話いただきました。

子どもの目は近視になりやすい
ここ数十年、視力1.0未満の子供の割合は年々増加しています。近視が進行するのは主に幼稚園〜中学生の時期で、その原因は遺伝と環境です。
アジア人は遺伝的に近視になりやすいのですが、今近視が増えている原因は生活習慣の変化です。細かいメカニズムはまだ明らかではありませんが、生活習慣としての改善目標と、近視進行を抑える治療ツールも概ね出揃いました。
すでに世界では10年以上前から近視治療に対する取り組みが多数行われています。それに遅れること令和7年4月、近視治療の点眼が日本で承認されました。
さらに秋には近視治療のソフトコンタクトレンズが、近視治療の特殊眼鏡も日本にそろそろ入ってきそうです。日本において近視治療2.0のフェーズに入ってきたといっても過言ではないでしょう。
今回、近視治療について3つのテーマに分けさせていただきました。本記事では子どもの近視治療の概略、第2回で近視治療のツールとして何を選ぶべきか、第3回で近視を進ませない生活習慣指導を書かせていただきます。
近視を進める生活習慣
近視が進む生活環境の変化は屋外活動の減少、近業(近くを見る作業)の増加です。
こちらのグラフを御覧ください。

横軸が近業の量、奥行きが屋外活動の量です。
近業が多い、屋外活動が少ないのいずれかであれば近視のリスクはそれほどではありませんが、両方が揃うと近視のリスクは激増します。
近業はスマートフォン、タブレット、携帯ゲーム機などの普及でも増えており、コロナ下においてはさらにこの傾向が加速したと考えられます。台湾では120分以上の屋外活動を国策として導入しており、導入された2011年以来近視の割合が減り続けています。
これらはご家庭でもできる対策です。

近視が進むと何がいけないか
眼鏡をかければ遠くが見えます。それでいいじゃないかと考える方も多いでしょう。実は近視の正体は眼の前後の長さが伸びる状態で、すなわち眼の変形を意味します。眼が変形することで網膜剥離を始め、緑内障、白内障、黄斑変性などのリスクが増加します。
眼鏡で解決する問題ではないのです。

近視治療ツールのラインナップ
近視は基本的に小児期、特に幼稚園〜小学校、中学校の間に進みます。海外を中心にさまざまな近視進行を抑える治療が試みられ、最近のものは非常に良い成績をおさめるようになってきました。
・薬物治療 低濃度アトロピン(今回本邦で承認されたリジュセアミニ)
・オルソケラトロジー 夜間に装用するコンタクトレンズ
・多焦点ソフトコンタクトレンズ 昼間に使うコンタクトレンズ
・特殊眼鏡 近視を進ませない、特殊な形状をしたレンズのメガネ
・光線療法 現在利用可能なものはレッドライトセラピー
子どもたちの未来の視力を守るために
まず、子どもの近視は生活習慣により悪化することを知りましょう。
家庭でできる対策として
・屋外活動の確保 目標2時間以上!
・近業の管理 姿勢はよく、こまめに休憩を挟む(少なくとも20〜30分に1回は遠くを眺める)
・デジタルデバイスの管理:手に持てるデジタル(スマホ、携帯ゲーム機)は最小限の使用にする、テレビなどの大きな画面で扱う
詳しくは厚生労働省のページにも書いてあります。
そのうえで、近視の進行に応じて新しい世代の道具(点眼、コンタクトレンズ、特殊眼鏡、光線療法)の導入を考えていきましょう。
子どもたちの未来の健康のために、まずは近視治療2.0の時代が来たことを知ってください。
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