(4)ゆっくりとしたペースで
HSCのお子さんは、新しい環境や変化に慣れるのに時間がかかります。周りの子と比べて、ペースが遅くても、「早くしなさい!」「どうしてできないの!」と焦らせるのは禁物です。
新しい習い事を始めたり、友達と遊んだりする時も、最初は短い時間から始め、子どもの様子を見ながら少しずつ時間を延ばしていくようにしましょう。
新しいことに挑戦させる時は、「大丈夫だよ」「きっとできるよ」と励ましたり、「一緒にやってみようか」と誘ってみたりすることで、子どもの不安を和らげてあげましょう。焦らずゆっくりと、新しい世界に慣れていくのを待ってあげましょう。
彼らの中には、完璧主義な子が少なくありません。「ちゃんとやらなきゃ」「失敗したらどうしよう」と、必要以上にプレッシャーを感じて、なかなか行動に移せないこともあります。
そんな時は、「無理しなくても大丈夫だよ」「いつでもやめていいんだよ」と声をかけて、プレッシャーを取り除いてあげてください。親御さんが温かく見守ることで、子どもは安心して、自分のペースで前に進むことができるのです。
子どものペースを尊重しながら、彼らの才能を伸ばしていくことも重要です。
(5)才能を伸ばす
HSCは、その豊かな感受性から、さまざまな分野で才能を発揮する可能性を秘めています。音楽、美術、文学といった芸術分野で才能を開花させる子もいれば、その鋭い観察眼と深い思考力を活かして、科学や研究の分野で活躍する子もいます。また、HSCは共感力が高いため、人の役に立ちたいという気持ちが強く、医療や福祉、教育などの分野で活躍する子も多いでしょう。筆者の私自身、HSCのお子さんたちが、それぞれの個性と才能を活かして輝いている姿を、診療を通してたくさん見てきました。
例えば、絵を描くことが大好きな女の子は、周囲の些細な変化や感情を繊細なタッチで表現し、コンクールで入賞するほどの才能を発揮しました。また、ある男の子は人の痛みに対する共感力がずば抜けて高く、つらい思いをしている人を助けたいんだ、と医師を目指すようになりました。
そして何よりエレイン・N・アーロン博士自身も自分がHSCであったと述べています。また繊細さをもつHSCの子達が将来成長し、各界のリーダー的存在になることが多いとも述べています。大切なのは、お子さんの興味や関心に耳を傾け、その才能を伸ばせるような環境をつくってあげることです。子どもが「好き!」「楽しい!」と思えることを、心から応援してあげましょう。
好きなことに熱中できる時間:
HSCのお子さんは、ひとたび好きなことに熱中すると、驚くほどの集中力を発揮します。周りの音が気にならないような静かな空間を用意したり、集中しやすいように机周りを整理整頓したり、子どもが集中しやすい環境を整えてあげましょう。
得意分野を活かせる場:
学校だけでなく、地域活動など、子どもが得意なことを活かせる場を見つけてあげましょう。自分の得意分野で活躍することで、自信をつけ、自己肯定感を高めることができます。HSCは、人一倍頑張り屋さんなところがあります。「人の役に立ちたい」「何かを成し遂げたい」という思いを、応援してあげましょう。
創造性を育む:
HSCは、豊かな想像力と発想力を持っています。絵を描いたり、物語をつくったり、工作をしたり・・・子どもが自由に表現できる機会をたくさん与えましょう。また、美術館に連れて行ったり、自然と触れ合う機会をつくったり、さまざまな体験を通して、子どもの感性を刺激してあげましょう。
これらの方法を通じて、HSCの子どもたちの才能を伸ばし、彼らの個性を輝かせることができます。
終わりに HSCの子どもたちの未来に向けて
HSCの子どもたちは、とても繊細で傷つきやすい心の持ち主です。しかし、その一方で、豊かな感受性と深い思考力、そして素晴らしい創造性を秘めた、まさに「ダイヤの原石」のような存在でもあります。
HSCの親御さんには、ぜひお子さんの素晴らしさを見失わずに、愛情と思いやりを持って接していただきたいと思います。適切なサポートと環境があれば、彼らは必ず、その才能を輝かせ、大きく羽ばたいていくことができます。
日々の小さな変化や進歩を大切に、お子さんと一緒に成長していってください。そして、もし困ったことがあれば、専門家や同じようなお子さんを持つ親御さんたちとつながり、サポートを求めることを忘れないでください。
HSCの子育ては、挑戦であると同時に、かけがえのない贈り物でもあるのです。あなたとお子さんの幸せな未来を心からお祈りしています。
参考文献
Aron, E. N., & Aron, A.(1997). Sensory-processing sensitivity and its relation to introversion and emotionality. Journal of Personality and Social Psychology, 73(2), 345-368.
エレイン・N・アーロン(著)(冨田香里, 訳)(2008). ささいなことにもすぐに「動揺」してしまうあなたへ . SB文庫.
エレイン・N・アーロン(著)(明橋大二, 訳)(2021). ひといちばい敏感な子.青春出版社
[執筆者]
飯島慶郎先生
不登校/こどもと大人の漢方・心療内科 出雲いいじまクリニック 院長
精神科医・総合診療医・漢方医・臨床心理士。
島根医科大学医学部医学科卒業後、同大学医学部附属病院第三内科、三重大学医学部付属病院総合診療科などを経て、2018年、不登校/こどもと大人の漢方・心療内科 出雲いいじまクリニックを開院。
多くの不登校児童生徒を医療の面から支えている。島根大学医学部精神科教室にも所属
不登校/こどもと大人の漢方・心療内科 出雲いいじまクリニック
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