共同親権を導入したらどうなるの?共同親権による影響とメリット・デメリットについて弁護士 菅野先生にお伺いしました。

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共同親権導入の影響

共同親権に関する制度はこれから始まるため、制度のメリットやデメリットは今後具体的に見えてくるところではありますが、以下のような影響が予想されます。

(メリット)
・子どもが父母と関わる機会を確保しやすくなる
共同親権によって、父母いずれも結婚していたときと同じように関与することが想定されているため、子どもにとっては、離婚しているとしても親とのかかわりを持ち続けられるという安心感を与えることが出来ます。もちろん、二重生活の負担などが生じないよう、子どもに配慮することは必須です。

・父母が協力して子どもを育てるための土壌を維持しやすい
単独親権では、親権者でない方の親にとって子どもを育てる実感を持ちにくいというのはすでに述べたとおりです。共同親権であればより子どもとのかかわりを積極的に持てるようになる結果、子どもを育てるために必要な費用や労力の分担についても前向きな協議をできることが期待できます。

(デメリット)
・父母にとっての負担が大きくなる懸念がある
離婚で夫婦としての関係を清算できたと思っても、共同親権となれば離婚した相手との関与は必須です。そのこと自体が負担になってしまうこともあるでしょう。まして、DVなどを理由に離婚するとなればなおさらです。裁判所でDVの事実などが認められれば単独親権にすることもできますが、万が一主張が認められなければ、共同親権が選択され、相手とのかかわりを解消できなくなってしまう懸念もあります。

・子どもをめぐる対立が起こりやすくなる懸念がある
上記とも関連しますが、共同親権は、それぞれが対等な立場で親権を行使します。そのため、どういった教育を受けさせるべきなのかなど、方針が対立した場合であっても相手を無視して決めるわけにはいかなくなるのです。そういった事情について、逐一裁判所の判断を仰ぐというのは現実的ではないでしょう。また、共同親権といっても子どもの体は一つです。どちらが身元を引き取るかなどについては、単独親権の場面でも問題になることが多いですが、共同親権でも大きな争点として残るでしょう。

最後に

共同親権の導入によって、子供と父母の安定的なかかわり方のオプションが増えたことは歓迎されるべきでしょう。イタリアやドイツなど、海外でも共同親権を導入している国は数多くあります。
もっとも、離婚後の父母間の紛争の懸念なども考えるとどういう運用をすべきなのかについては慎重に見守る必要もあるだろうと思います。
単独親権であれ、共同親権であれ、これらの制度はいずれも「子どもの成長のため」という視点が根本であるべきなのは間違いありません。
今後も多くの制度改正が予想される分野ですので、関心をもって見守っていく必要があるでしょう。




執筆者

菅野 正太(かんの しょうた)
弁護士法人 永 総合法律事務所 所属弁護士

経歴
上智大学法学部法律学科 卒業
早稲田大学大学院法務研究科 卒業。中小企業法務、不動産取引法務、寺社法務を専門とする弁護士法人永総合法律事務所の勤務弁護士。
第二東京弁護士会仲裁センター委員、同子どもの権利委員会委員

弁護士法人 永 総合法律事務所HP
https://ei-law.jp/

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