勉強は嫌がるけど、ゲームは夢中になってやっている。この熱心さを勉強にも活かしてくれれば・・・そんな風に思ったことはありませんか?今回は、ゲームの要素を活用した勉強方法について、一般社団法人インナークリエイティブセラピスト代表佐藤城人さんに前後編に分けてお答えいただきました。今回は後編です。
勉強への「適切な評価」「ご褒美」とは?
前回は勉強への「期待感」についてお話ししました。今回は勉強の「評価」や「ご褒美」についての考え方です。
[B-1]アウトプットと傾聴の時間
アウトプットの時間とは、一定時間勉強をした後、どのようなことを学んだのか、ノートにまとめる、ないしは親に説明をしてもらう時間のことです。参考書に確認のミニテストが付いていれば、そのテストに取り組むのもOKです。
ゲームでも新しいスキルやアイテムを手に入れることができた場合、試したくなるのと同じです。インプットして学んだことをアウトプットすることにより、知識の定着や正しい理解が促進されます。そしてその時間は、ぜひお子さんの発表に耳を傾けてあげてください。できれば、片手間ではなくキチンと向きあっていただくと、子どもも真剣になります。そして、話の腰を折らずに最後まで聞くこと『傾聴』を意識なさってください。
*ゲームで上手くいったとき、子どもの表情はイキイキとしていませんか?同じように「聞いてもらえた!」「上手く話せた!」これだけでも、お子さんの安心感や自信につながります。
[B-2]適切な報酬
課題をクリアできたとき、アウトプットできたとき、何かしらの報酬を用意してください。この報酬を得ることもモチベーションアップにつながるからです。クリアするごとに台紙にシールを貼る、または取り組んだ時間をグラフにして色分けする(科目ごとに色分けをすると、どの科目に時間をかけたかがわかります)などの方法です。
このグラフも例えば、日本の鉄道マップのようにして走破するようなグラフや、かわいらしいお花のシールを貼って、次第に花束が完成するような図柄にするなど、楽しめる要素を取り入れてみてはいかがでしょう。
ゲーミフィケーションにおける報酬(ご褒美)の意義
ゲームの場合、目標を達成したり、時間内にクリアできたりした場合、何かしらの報酬がもらえます。この方法を勉強にも導入することです。本来ならば報酬無しで勉強に打ち込むのが理想です。ただ、私たち大人であっても、労働の対価として給与を受け取っています。同じように、勉強への苦手意識を払拭する一つの手段。と捉えても良いのではないでしょうか。
ただ、報酬を与える際、効果的な方法とそうではない方法に分かれます。
ハーバード大学のフライヤー教授が実施した実験があります。対象はアメリカの小学2年生から中学3年までの約3万6,000人の学生です。そして、実験の結果、次のことがわかりました。
「結果への報酬ではなく。行動への報酬」
ご褒美を与える場合、大きく次の2つに分けることができます。
(1)望む成果を出したとき
(2)望む行動を取ったとき
(1)は「成果主義」です。点数がアップした。順位が上がったなどの成績がアップした場合に報酬が与えられます。
(2)は「行動主義」です。勉強をするという行動に対する報酬です。
実験の結果、成果主義と比べて、行動主義の方が成果を出しやすいことがわかりました。これが理由です。成果主義の場合、多くの子どもは何をすれば成果が出せるのか、具体的な取るべき行動へのイメージを持つことができませんでした。これに対して「行動主義」は、取るべき行動が明確にわかります。やるべきことがわかりやすかったため、行動に移すことができたんですね。
このことから、ご家庭で報酬を設定する場合は、「成績がアップしたらご褒美」「優秀者に選ばれたらご褒美」のような成果主義ではなく、「〇時間勉強をしたらご褒美」「〇問解けたらご褒美」のように行動主義で行うことがおすすめです。
特に勉強が苦手なお子さんの場合、何をどうしたら良いのかが不明で、わからない場合が多いです。子どもの「はてな?」を、「やった、できた!」にするための行動主義とご理解ください。
さいごに
「リフレーミング」これは心理カウンセリングの理論の一つです。一般的にはネガティブな表現をポジティブに言い換える手法をいいます。
前編の冒頭の「めんどくさがり」をリフレーミングしてみましょう。クイズの答え合わせです。
・自分の気持ちに正直
・「いざ!」というときのためにエネルギーを備えている
・動きがのんびり、ゆったり
・やりたいことを厳選している
・完璧を求めていない
幾つか考えてみました。シックリくる言葉はありましたか?
あなたのお子さんがもし「めんどくさがり屋さん」だとしても、プラスの意味に捉え直すことは十分に可能です。そして、親は子どもにとっての安全基地にほかなりません。どうぞ、ネガティブな言葉で子どもを叱りつけるのではなく、温かい言葉で励ましてください。
とかく目の敵にされがちなゲームです。しかし、「なぜ子どもが夢中になるのだろう?」 という疑問から生まれた「ゲーミフィケーション」の理論。これも、リフレーミングの発想から生まれたものです。
この記事が、お子さんの健やかな成長の一助になれば嬉しいです。
執筆者
佐藤城人(さとうしろと)
一般社団法人インナークリエイティブセラピスト協会 代表
心理カウンセラー・心理セラピスト・気功師範
経歴
過去にアルコール依存症を患った経験があり、それを克服する過程で40代に再度大学に入学、心理学と出合う。
各種依存症やインナーチャイルドを抱える方、さらには摂食障害の悩みなど、これまで10年間で約5,000名様の悩みをサポート。
近年はヤングケアラーはインナーチャイルドの予備軍と位置づけ、お子さまや親御さまの支援にも力を入れている。
2019(令和元)年一般社団法人インナークリエイティブセラピスト協会を設立。
カウンセラー・セラピストの養成にも力を入れている。
一般社団法人インナークリエイティブセラピスト協会
https://in-ct.org/